Q熱(Query fever, Coxiellosis)

感染症法:五類感染症(細菌性髄膜炎)

概要

 Coxiellla burnetiiにより,急性では発熱,関節痛等のインフルエンザ様症状,肺炎,肝炎等を示す.慢性では,肝炎,心内膜炎等を呈する.

疫学

従来,わが国ではQ熱は存在しないと言われていたが,1988年にカナダから帰国した留学生の発症例が報告なされて以来,人をはじめ家畜,愛玩動物等に広く存在することが明らかとなった.不定愁訴を示す患者,慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome;CFS)の約20%が抗体保有者であり, PCR陽性者も認められている.また,市中肺炎の4.2%にQ熱患者が存在することから,患者は相当数いると推定されている.この様なQ熱患者の共通点は動物との接触が深く関わっている.

感染経路

動物の糞便,尿,羊水,生乳,乳製品等からの経口,経気道の感染.

保菌動物

野性動物,家畜,愛玩動物,鳥類など各種動物が感染し,保菌動物となり,世界各国に分布する.

病原体

 Coxiella burnetiiは,近年,リケッチアからレジオネラ目コクシエラ科コクシエラ属に分類された一属一種の小桿菌状で多形性を示す0.2〜0.4×1.0μmの大きさの菌である

動物における本病の特徴

症状

一般に軽い発熱,鼻汁程度で多くは不顕性に終わる.妊娠動物では死流産を起こすこともある.

潜伏期

感染実験では3〜7日程度である.

診断と治療

蛍光抗体法による血清抗体価測定,PCR法による遺伝子の検出.治療にはテトラサイクリン系抗生剤,ニューキノロン系抗生剤が使用される.

検査法と材料

抗体価測定(蛍光抗体法)には血清0.5ml以上を凍結して送付する.PCR法による遺伝子検出には血清0.5ml以上,または臓器を凍結して送付する.

予防

ワクチンは無い.飼育環境の消毒.

法律

感染症法の四類感染症に定められているが,動物における届出義務はない.

人における本病の特徴

症状

14〜26日の潜伏期の後,

急性型:急激な発熱,頭痛,胸痛,筋肉痛,関節痛,悪寒,食欲不振等のインフルエンザ様症状を呈する.その他に肺炎,肝炎,心内膜炎,髄膜炎,髄膜脳炎,腎臓障害等の多彩な病像が診られる.予後は一般に良好で,多くは数週間後には回復する.

慢性型:急性患者の数%以上が,心内膜炎,慢性肝炎,心筋炎,心外膜炎,壊死性気管支炎,QFS (post Q fever fatigue syndrome;慢性疲労症候群様症状を呈する)等が認められる.まれに血管炎,多発性関節炎,胎盤炎,流産等も起こす.重症の合併症では,死の転帰をとることもある.

診断と治療

動物と同様.愛玩動物を飼育している人は診察時に申告すると良い.一般に予後は良好で,2週間以内に回復する.治療には,テトラサイクリン系薬剤の投与.

類症鑑別

急性期ではインフルエンザ.QFSでは,CFS,うつ病,詐病等

検査施設

北里研究所生物製剤研究所 TEL:048-593-3953.

予防

出産時の動物(愛玩動物も含め),特に死・流産などをおこした動物の取り扱いは要注意である.流産胎盤などは焼却し,汚染された環境はクレゾール石けん液,5%過酸化水素水(金属製器具には不可)で消毒する.

法律

感染症法の四類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

(荒島 康友)

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