結核(Tuberculosis)

感染症法:二類感染症,家伝法:家畜伝染病

概要

 「世界三大感染症(あと二つはHIV感染症とマラリア)」のひとつとされている結核は,結核菌によって起こる,肺などの呼吸器官の発症が主であるが,中枢神経(髄膜炎),リンパ組織,粟粒結核,骨,関節など全身性に病変の見られる重要な細菌性の共通感染症である.

疫学

 結核は単一病原体による世界最大の感染症である.近年,わが国では患者数が減少しているものの,平成28年度は17,625人の新規患者が登録され,1,779人が亡くなっている.その罹患率は人口10万に対し13.9(平成28年)で欧米に比べ2〜5倍であり,世界の中では結核蔓延国である.

感染経路

 肺結核患者の咳やクシャミからの飛沫核感染.また,感染動物(牛,豚など)から排泄される飛沫によって感染する.稀に非加熱の感染牛乳や乳製品を介した経口感染による集団感染することもある.

保菌動物

 喀痰塗抹陽性肺結核患者,牛,サルなどの感染動物.

病原体

 結核菌は,Mycobacterium属に属し,抗酸菌と呼ばれる細菌群の一種である.芽胞,鞭毛,莢膜を持たない,偏性好気性桿菌である.細胞壁にミコール酸と呼ばれる脂質を多量に含有する.

 4菌種は,(1)37℃で増殖可能だが28℃で増殖しない,(2)耐熱性のカタラーゼを持つ,などの点で他の抗酸菌とは区別され結核菌群(M.tuberculosis complex)と呼ぶ.

動物における本病の特徴

症状

 : 主に牛型結核菌の感染による.一般に臨床的症状は見られないが,重症例では発咳,食欲不振,乳量減少,痩削,体表リンパ節腫大・硬結等を呈する.

 サル: 牛型,人型結核菌の感染による.一般に開放性患者からの飛沫核感染である.マカカ属,類人猿は感受性が高く,新世界ザルは低い.症状は不顕性から突然死まで様々である.非特異的症状として,持続性の咳,食欲不振と元気消失,慢性的な体重減少,リンパ節腫大,脾腫,血沈増加などが見られる.

 犬・猫; 犬は人型結核菌に低感受性であるが,猫は犬より感受性が高い.他の動物と同様,特徴的症状は見られない.近年,人肺結核患者より感染した犬の結核が日本,米国で報告されている.

潜伏期

 動物種により異なるが,感染後2〜3週後に初期病変が見られ,4〜6週後にはツベルクリン反応(ツ反応)が陽転する.

診断と治療

 ツ反応(サルではオールドツベルクリン試験),病原体の確認(培養,PCR法),抗体検査.病理学的検査,牛結核ではインターフェロンγ検査が行われる.牛では定期的にツ反応が実施され,陽性牛の早期発見と淘汰(防疫上).

予防

 ワクチンはない.日本に輸入されるサルの多くは医学前臨床試験用のため,検疫,ツ反応検査などが行われている.人への感染予防は個人防御の徹底と検疫の実施,感染サルの隔離・淘汰.

法律

 家畜伝染病予防法により届出義務(対象動物は牛,山羊,水牛,鹿)があり,診断した獣医師は直ちに最寄りの家畜保健衛生所へ届出る.また,感染症法(二類感染症)により,サルの本疾患を診断した獣医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

人における本病の特徴

 新規登録患者の大半(80%)が肺結核で,そのうち72%の患者は排菌している.最近では,若年層で感染後の結核発病リスクが高まっている.世界では1/4の人々が感染している.2016年,推定1,040万人が発病し,170万人が死亡している.また,HIV感染者の増加が結核のまん延を加速させるなど,深刻な問題となっている.世界中で発生しているが,特にアジアとアフリカで多く発生している.

症状

 潜伏期:感染者の免疫能の状況によるため不定であるが,概ね4〜12週間.感染後1〜2ヶ月でツ反応陽性.感染しても全員が発病するとは限らない.症状は多彩で,肺結核は,咳,喀痰,長期間の微熱での非特異的治療では治癒せず,進行して全身倦怠感,体重減少,血痰,呼吸困難に陥る.小児結核では肺結核よりも,粟粒性結核や結核性髄膜炎が先行して見つかることもある. 肺外結核では,あらゆる臓器や組織が冒され,遷延性の不明熱と髄膜炎症状,脊髄神経病変,腹水,皮膚病変,骨・関節なども冒される.粟粒結核,結核性髄膜炎やリンパ節結核は要注意.

診断と治療

 既往歴,ツ反応,細菌検査(喀痰塗抹染色,培養)PCR法による結核菌DNAの存在確認,胸部X線像.鑑別疾患としては,細菌性・ウイルス性肺炎,肺ガンなど.治療にはイソニアジド,リファンピシン,ピラジナミド,エタンブートルまたはストレプトマイシンの4剤併用療法を行う.近年,耐性を持つものがあり,イソニアジドとリファンピシンに耐性を持つものは多剤耐性結核菌と呼ばれる.最近では,治療中断による耐性菌を防ぐため確実な服用を目的としたDOT(Directly Observed Therapy直接監視下治療)が勧められている.

予防

 患者の早期発見・隔離・治療,BCGの予防接種(ツ反応が陽転するまで繰り返す).

法律

 感染症法の二類感染症に定められている.診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている.

(池田 忠生)

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